ウガンダ生活

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マリリンと私1

みなさん、マリリン・マンソンをご存知でしょうか?

89年に結成された、フロントマンことマリリン・マンソン率いるアメリカのロックバンドであり、90年代のインダストリアルロック、ショックロックシーンを代表する音楽作品の数々を生み出したバンドでもあります。
私の友人である方々は一度は名前を聞いたことがあるかと思いますが、我が人生の師匠であり、ヒーローであり、長年の心の支えでもあるこのスーパースターについて、私なりの視点から改めて紹介記事を書いてみました。

 

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出会い


私がマリリンを発見したのは、小学校六年生のときに出会ったバンドの3枚目のスタジオアルバム「Mechanical Animals」がきっかけでした。

そもそも私がこのCDを手に取ったのは、「この人、男なの?女なの?」という素朴な疑問から。白塗りの面長の顔に、両性具有風の特殊メイクを施した体、そして「マリリン」という女性名を冠したバンドネーム。何から何までややこしい・・・。

そんなこんなで音楽への探究心というよりは、純粋な好奇心から視聴コーナーへ。

メカニカル・アニマルズ

メカニカル・アニマルズ

 

しかし一曲目「Great Big White World」がかかるやいなや、イントロの物悲しげなギターの音色、次いで入ってくる小気味良いドラムのリズム、そしてそれまで出会った音楽の中では決して聞いたことのなかったマリリンの這うようなボーカルで、完全にノックアウトされてしまいました。(ちなみに男でした)

 

今にして思えばマリリンは私にとって「ロック」への入り口であり、「洋楽」への入り口であり、そして何より「知性と反抗のアート」への入り口でした。

中学に上がって初めての誕生日、アマゾンチケット三万円分を両親にプレゼントしてもらった私は、さっそく彼の全アルバム、DVD、発言集、そして自伝に至るまで、あらゆるマリリン関連グッズを買い漁りました。そのくらい当時の私にとって彼との出会いは衝撃的だったのです。

 

さて以下、私なりにマリリン・マンソンというバンドの魅力となるポイントをまとめてみました。

 

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①おしゃれマンソン

日本だとマリリンのファンとビジュアルロックのファンはかなり層が被っているようです。最近でいうならX-JAPANのYoshikiとの交流が有名ですし、それ以前からL'Arc〜en〜Cielのhyde が彼に影響を受けたと明言している他、ゴシック・ロリータファッション雑誌KERAにてしばしば関連記事が掲載されたことなどからも、この辺りの繋がりが伺えます。
私自身日本のビジュアルロックにはあまり明るくないのですが、やはり彼の見た目の奇抜さが当時の私にとって衝撃的であり、今尚彼の大きな魅力の一つであることは間違いありません。


以下、デビューアルバムから90年代の三部作にかけて、順を追って彼のビジュアルの変遷を代表曲PVと共に紹介していきます。


「Portrait Of An American Family」(1994)

今にしてみるとかなり初々しくて素朴な印象。そして眉毛が生えている(!)

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この頃、バンド名はまだMarilyn Manson And The Spooky Kids(マリリン・マンソンと不気味な子供達)でした。「◯◯と愉快な仲間たち」を地でいくような名前に、ちょっとほんわかしますね。

 

この頃の個人的お気に入りPV「Dope Hat」

映画「チャーリーとチョコレート工場」に登場する主人公ウィリー・ウォンカに扮したマリリンや、エッチなお姉さんの体にチョコレートシロップを塗りたくる偽ウンパルンパたちが楽しめます。著作権大丈夫なのか?という素朴な疑問は置いておくとして・・・。

ちなみにリメイク版「チャーリーとチョコレート工場」のウィリー・ウォンカ役候補には当初マリリンの名前が上がっているという噂がありましたが、監督候補だったゲイリー・ロスは「俺がマリリン・マンソンなんかキャスティングするわけないだろ!狂気の沙汰だ!(“I would never cast Marilyn Manson in a billion years! It’s insane!”)」と大否定しておりました。


「Antichrist Superstar」(1996)

Wormboy(蠕虫少年)という収録曲などからも見て取れる通り、この頃のビジュアルには幼虫や羽虫のイメージが頻繁に登場します。Antichrist Superstar, Mechanical Animals, Hollywood三作品を通じて語られる物語の一つである、「虫けらのような少年がいかにして怪物になっていったか」というあらすじになぞらえてあるようです。

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全体的にひびわれた、ざらついた質感のあるイメージが多数。前作の頃と比べると明らかに洗練されているのがわかります。


私の大好きな白カラコン。

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ヒット曲「Beautiful People」のPVは90年代ロックシーンを代表する傑作といっても過言ではないでしょう。

ちなみに同アルバム収録の「Tourniquet」(止血帯、なんて良いタイトル!)PVのビジュアルに感銘を受けて、マリリンの子供時代のスターだったデビッド・ボウイが監督フロリア・シジスモンディに自らの「Dead Man Walking」PV監督を依頼するなどという感慨深いエピソードもあります。


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攻撃的なサウンドとは裏腹に、自傷の傷跡の生々しい、肋の浮き出た華奢な体が、どこか少女的な独特の脆さを漂わせています。私に言わせると、マリリンは激しい怒りや攻撃性と共に、常に何かしら傷ついた者のイメージを帯びたアイコンでもあるのです。


「Mechanical Animals」(1998)

初めて聞いたアルバムともあって個人的な思い入れの特に大きな時代。

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この頃のマリリンはどこか物憂げで、虚ろな表情を浮かべ、中性的な格好をした写真が多いのが特徴です。というのもこのアルバムそのものが「Omega and the mechanical animals」と言う宇宙人率いる架空のバンドによるロックアルバムという体で発売されたものだから。おそらくここでの彼はバンドのフロントマン(フロントエイリアン?)ことオメガになりきっているのでしょう。

歌詞の中にも「宇宙」「星」「空虚」といった言葉が頻繁に登場し、地球で知らない人間たちに囲まれ、あれよあれよというまにロックスターとして担ぎ上げられ、持てはやされながらもその実ショウビジネスの世界に翻弄されるオメガの孤独な心中が伝わってくるようであります。

 

「Dope Show」のPVでは、オメガが地球に降り立ってからロックスターとして売り出されるまでのストーリーを見ることができます。

 

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マリリンは子供時代、デビッド・ボウイ、ルー・リードなどに代表されるグラム・ロックに大いにインスパイアされました。宇宙人バンドのアイデアは間違いなくボウイの「ジギー・スターダスト」からの影響ですし、随所にみられるきらびやかでフェミニンなイメージも一群のアーティストたちを模したものと思われます。細身で長身なので、見事にスーツが似合いますね。

 

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映画「マトリックス」の主題歌となった「Rock Is Dead」PVに登場する奇抜なシースルー。滑稽ギリギリ、というかやっぱちょっと笑えるんですが、そんなところもご愛嬌。プロモでも変顔連発してます。

 

「Holly Wood: In The Shadow Of The Valley Of Death」(2000)

 三部作の中で最も攻撃的かつ、サウンド・ストーリー共に重たいと言われているのがこのアルバム。詳細はのちに述べますが、コロンバイン高校の銃乱射事件で巻き起こった批判により音楽シーンから半ば追放されかけていたマリリンの、怒りと闘いの意思が込められたアルバムでもあります。楽曲の収録中、作業に集中するあまり過労により救急車で運ばれたりもしていました。

まったく余談ですが、私の10歳の誕生日当日にリリースされている私的記念すべきアルバムでもあります。こんな素晴らしい誕生日プレゼントが他にあるでしょうか。

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メカニカル・アニマルズ時代から一転して、黒を基調としたかっちりとしたスタイルが特徴的です。サウンド面のヘヴィロック感がしっかりとビジュアルにも反映されており、派手さこそないものの、シックな格好良さに溢れています。

 

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この頃のライブはとにかく仕掛けやお色直しが多く、小道具も満載。2枚目はライブ名物のたけうマンソン。ステージパフォーマンスへの凝りっぷりは当時かなりの話題でした。

マリリンには名物MCがいくつかあり、「Irresponsible Hate Anthem」の"We hate love, we love hate"や、「Fight Song」の"Fuck everything!"(と、それに続く"...oh yeah, fuck the police too")なんかが代表的。

 

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アルバムの歌詞カードに挿入されていたバンドメンバーのタロットカード。トウィッギー、ジョン5、ジンジャー、ポゴ、今はなき過去メンバーが懐かしい。この頃、唯一坊主だったのではないかな。

 

就活のストレスの最高長期、面接前に訪問先の企業のトイレにこもっては聞いていた「Fight Song」

スポーツに縁のないマンソンが珍しくアメフトプレイヤーたちを登場させていますが、おそらくは現代アメリカ社会への批判という皮肉を込めてのことでしょう。(バンドがパフォーマンスするステージの背景には、でかでかと「We're Happy To Live In America」/俺たちアメリカに住めてハッピー、の文字が)

少々話が逸れますが、全くと言っていいほどマリリンはスポーツというものに関心を示しません。ティーンエイジャーの頃近所のベースボールグラウンドの隅っこで済ませたお粗末な初体験が何か関係しているのではないかとは本人の推測より(性の目覚めに関しては、自伝でかなり詳細に読むことができます)

 

これら奇抜かつスタイリッシュなビジュアルはそれ自体ですでに十分魅力的であるだけでなく、「マリリン・マンソン」というブライアン・ワーナー少年のある種のコスプレであるという点でも、私にとって新鮮でした。コスプレだからこそ非日常的な格好ができるし、非日常的な歌が歌えるし、非日常的なステージパフォーマンスが行えるわけです。いわば元虫けら少年ブライアンが発明したロックスターのペルソナ、それがマリリン・マンソンともいえます。今思えば私が学生時代10年間役者として演劇に関わったのも、類似の変身願望の表れだったのかもしれません。ただしブライアン少年に関して言えば、そのペルソナはすでに元の虫けら少年を不可逆的に変えてしまっているのですが。

ちなみに大学の頃、マリリンにインスパイアされて私自身も革ジャンにマリリンのバンドT、ガーターベルト風タイツ、赤いエナメルのパンプスみたいな格好をしていました。当時付き合っていた人が和柄好きだったためはたから見ると相当アクの強いカップルだったろうと思います。(元彼からの評価は低かった)

 

(つづく)

dasboott.hatenablog.com